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株式会社良品計画(小売)

【第10回クオリティサービス・フォーラム レポート】
良品計画における「業務仕組み化」と「CS」

株式会社良品計画(小売)

株式会社良品計画

http://ryohin-keikaku.jp/

代表取締役社長(兼)執行役員 松﨑 曉

東京都豊島区東池袋4-26-3

事業内容:「無印良品」を中心とした専門店事業の運営/商品企画/開発/製造/卸しおよび販売

展開するブランド:無印良品、Café & Meal MUJIほか

『季刊MS&コンサルティング 2017年冬号』掲載
※記載されている会社概要や役職名などは、講演(掲載)当時のものです。ご了承ください。
※掲載記事内の図表等は、すべて発表資料を基にMS&Consultingが加工しております。
「無印良品」の商品企画・開発・販売を手がける株式会社良品計画。シンプルで機能的なデザインコンセプトが多くの人に受け入れられ、1990年代に急成長・急拡大することになった同社だが、事業の成長に組織の成長が追い付かず、2000年代には一時的に業績が伸び悩むこととなった。こうした組織的課題解決の一策として作られたのが、同社の業務基準書MUJIGRAM(ムジグラム)である。全12冊、合計2,000ページというボリューム、そして毎月改定が行われるという改廃の仕組みなど、一般的な企業のいわゆる業務マニュアルとは一線を画すこの基準書は、同社の「仕組み」としてなくてはならない存在となっている。クオリティサービス・フォーラムでは、このMUJIGRAM制作にあたって中心的な役割を果たされた、同社業務標準化委員会・人材育成委員会課長の小川恭平様より、MUJIGRAM誕生の背景や活用方法についてご発表いただいた。

MUJIGRAM誕生の背景

1980 年、40 品目からスタートした「無印良品」。90 年代に急成長・急拡大を遂げるが、その裏ではさまざまな問題が発生していた。

「無印良品」の店舗数は、2016年度第2四半期末で国内418店舗、海外362店舗。今でこそアイテム数、店舗数も増え、海外のお客さまにも商品を手に取っていただけるようになりましたが、もともとは西友のプライベートブランドとして、1980年に40品目でスタートしたブランドです。

当時というのは、各社がプライベートブランドを出すようになった時期なのですが、世の中はまだまだ「安かろう、悪かろう」という風潮が根強い時代でもありました。そこで、「無印良品」は、「わけあって、安い。」というキャッチフレーズで、なぜ安いのかという3つの理由(素材の選択、工程の点検、包装の簡略化)を明確に打ち出しました。そして、ありがたいことに、このコンセプトは多くのお客さまに広く受け入れていただくことができまして、90年代には事業が急拡大することとなりました。

ただ、インフラが整っていない中で事業や組織だけが急拡大した結果として、2000年代の初め頃には、社内でいろいろな問題が発生するようにもなっていました。例えば、「業務の属人化」。「そのことについては、あの人しかわからない」といった場面があちらこちらに生まれてしまいました。あるいは、「社内のインフラ整備が組織の成長スピードに着いていけず、機能しなくなっている」とか「どんどん新しい人が入ってくるので、人材育成が追い付かない」といったような問題も多々発生しました。また、こうした状況を受けて、業績も落ち込むようになりました。

「このままではまずい、何とかしなくては」という危機感から、「見える化」「仕組み化」「風土づくり」という3つのキーワードを掲げての取り組みが開始されました。本日ご紹介するMUJIGRAMは、この3つのキーワードの中でも、特に「仕組み化」に重点を置いた取り組みです。

MUJIGRAMとは

MUJIGRAM

無印良品全店に配置されているMUJIGRAM。マニュアル12冊に、スタッフトレーニング用の1冊の合計13冊、総ページ数は2,500ページにもなる。

MUJIGRAMとは何かということを一言で申しますと、「会社の仕組みの中にあって現在最も効率的と考えられる“業務のやりかた”が示されている業務基準書」です。12冊(合計約2,000ページ)のマニュアルに、「販売スタッフTS(トレーニングシステム)」という教育用の別冊が1冊、全13冊を1セットとして、各店舗に1セットずつ配置されています。

MUJIGRAMによって、業務を「仕組み化」するにあたってのポイントは、以下の3つです。

●全ての業務を徹底的に見える化すること。
業務が属人化してしまい、「その人しかできない」という業務が生まれると、その人のキャパシティによって業務量が決まってしまい、オペレーションが回らなくなってしまいます。そこで、「見える化できない業務はない」という視点で、標準化を徹底することに務めました。

●何人かの人間が100点を取れるのではなく、全員が「80点」を取れることを目標とする。
先ほどの「業務の属人化」の話にも通じますが、特筆した才能を持った人の存在というのは、それはそれで素晴らしいことではあるのですが、やはり我々はチームオペレーションをしていて、組織で勝負していく会社です。そのため、全員が80点を取れることを目標として取り組みました。

●戦略は二流でも、実行力は一流を目指す。計画5%、実行95%で組織と人を強くし、圧倒的な「現場力」を鍛える。
机上で計画ばかり立てていないでとにかく動いてみよう、そのことを通じて「現場力」を鍛えようということです。会社という組織において、フロントラインである店舗を一番強くしようという方針を、明確に定めました。

資料1_シルエットとカラーのバランスについて、最低限のルールが写真を使ってわかりやすくまとめられている。

MUJIGRAMの「マネキンコーディネートのポイント」:シルエットとカラーのバランスについて、最低限のルールが写真を使ってわかりやすくまとめられている。

MUJIGRAMと一般的なマニュアルの違いをご説明するために、「マネキンコーディネートのポイント」のページをご覧いただければと思います。

マネキンのコーディネートは、基本的には新商品が出るタイミングで本部から指示が出るのですが、その商品が売れていってしまうと、店舗の判断でリプランニングする必要が出てきます。そうしたときに、お店にはたいてい一人か二人は「あの子に任せておけば大丈夫」というおしゃれなスタッフがいるのですが、そういう人頼みにしておくと、業務が属人化してしまいます。

MUJIGRAMは、属人化を排除することが目的ですから、スタッフのセンスに頼らずに誰でもコーディネートができるように、「シルエットは三角形か逆三角形にまとめる」「基本カラーは3色以内に収める」などという最低限のルールが書かれています。このルールさえ守っていれば、100点は無理でも、全員が80点のコーディネートをすることができるようになります。また、このような明確なルールがあることによって、店長がスタッフに「なんか格好悪いね」ではなく、「色を使い過ぎているせいで、まとまりがないね」という風に、具体的な指導ができるようにもなります。

それから、MUJIGRAMは必ず「なぜ」から始まります。例えば「レジ対応」という業務であれば、「お客様が購入される商品の代金をいただき、商品をお渡しするお客様応対です」という業務の簡単な説明と合わせて、「レジは店舗業務の20%を占める重要な仕事のため」というふうに、「なぜ」その業務が必要なのかという理由が必ず書かれています。言ってしまえば当たり前のことでも、全ての業務に「なぜ」を書いています。

これはなぜかと言うと、スタッフの意識を変え、「現場力」を鍛えるためです。人の意識というのは、なかなか変わりません。人から何か言われて変わるものではないのです。しかし、「納得して、実行する」ということを続けていれば、人の意識は自然と変わっていきます。そのためMUJIGRAMでは、「たしかにこの業務はこの目的のために大事なことなんだ」と納得して業務に取り組めるよう、必ず「なぜ」が書かれているのです。

MUJIGRAMの改定

「顧客視点シート/改善提案」画面。アルバイトまで含めた全スタッフが閲覧、入力できるようになっており、ここから生まれた改善策がMUJIGRAMにも反映されていく。

「顧客視点シート&改善提案」の入力画面:アルバイトまで含めた全スタッフが閲覧、入力できるようになっており、 ここから生まれた改善策がMUJIGRAMにも反映されていく。

マニュアルというのは作った瞬間から古くなるものです。現場は、それくらいスピードがあります。それを無視しては、せっかく作ったマニュアルもあっという間に役に立たないものになってしまいますので、そうしたことがないよう、MUJIGRAMは改定の方法についてもシステムに落とし、仕組み化しています。

具体的には、「顧客視点シート&改善提案」と呼んでいる改善提案システムです。アルバイトまで含めた全スタッフが閲覧、入力できるようになっており、お客さまや店舗からの意見や改善要望が、このシステムを通じて本部に集まるようになっています。この情報をもとに、改善方法が検討され、それがMUJIGRAMにも反映されるという流れです。優秀な改善提案を出した店舗を半期ごとに表彰するなどのインセンティブも準備しており、2015年度は合計11,500件の意見・提案が提出されました。こうした情報をもとに、データでは毎月1回、そして四半期に1回は印刷した最新のMUJIGRAMを、全店舗に送付しています。

マニュアルは創造性を奪うか?

最後にまとめとして、「マニュアルは社員から創造性を奪うか?」というテーマでお話をさせていただきたいと思います。
と申しますのも、MUJIGRAMのご紹介をさせていただくと、必ずと言って良いほど「サービス業では、いろいろなお客さまがいらっしゃって、それに対応するスタッフもそれぞれ。また店舗の立地だって違う。それなのに、マニュアルに基づいた通り一遍のサービスで、良いのでしょうか?」というご質問をいただくからです。

それに対して、私は「守破離」という、日本古来の芸事における考え方でご説明をしています。
最初のうちはまず師匠の型を「守」る。その後、型の研究を進めて「破」る。最後に、型から「離」れて自在になる。このスキル上達の流れは、店舗の業務についても言えることで、やはり最初のうちは、基本となる「型」が必要不可欠であると思います。というのも、しっかりした基礎がなければそもそもブランドのコンセプトをお客さまに伝えることができませんし、何より、型がなければ「破」ることもできない、つまり改善提案も出てこないからです。

先ほどお話したマネキンのコーディネートでも、「カラーは3色」という基本の型があることによって、例えば「今年はこの色が流行っているので、基本の3色と流行色で、4色にしたら良いのでは」といった提案が生まれる可能性も出てきます。このように、「もっとこうしたら?」という提案がどんどん出てくるのが、MUJIGRAMという基本があることの良さだと思います。

製品というのは、どれだけ良いものを作ってもすぐに模倣されてしまう恐れがあります。しかしサービスや仕事の基準というのは、一朝一夕に真似することはできません。つまり、この部分を磨きあげることができれば、競合他社との差別化につながります。
そのための手段としてMUJIGRAMが有効に機能するよう、今後も取り組んでいきたいと考えています。

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