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「働き続けたい」と思わせる秘訣は、店長の自己開示 売上目標大幅達成を実現するチームワークの作り方に迫る

株式会社一家ダイニングプロジェクト​​​​​​​

取材:砺波敬之、宮本紗和
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

従業員満足度調査「tenpoket」 の中にある「帰属意識(あなたは今の会社・店舗に所属し続けたいと思いますか?)」の項目。スタッフの離職に悩むマネージャーにとっては最も気になるであろうこの項目で、店舗の平均が5点(つまり全員が5点満点と回答)を獲得、そしてその抜群のチームワークを発揮して売上目標を連月大幅達成している株式会社一家ダイニングプロジェクト「屋台屋博多劇場」新橋店。ところが、岩崎一典店長にお話を伺ったところ、「診断を行う3カ月前までは最悪のチームワークだった」とのこと。いったいどんなマネジメントを行ったのか、ポイントをお聞きした。
※「HERB診断」は「tenpoket(テンポケット)」に名称変更しました。

「帰属意識」満点の秘訣は店長の自己開示

――岩崎店長がマネジメントされている「屋台屋博多劇場」新橋店について、ご紹介いただけますか?

当店は、今年の6月でオープン2年目を迎える新橋駅近くの居酒屋になります。席数は80席で、立地柄、お客さまはサラリーマンの方が中心です。スタッフは仕込みが2名、営業が6名。営業6名は全員学生のアルバイトスタッフで、3人はオープニングから、後の3人は半年前から勤務してくれています。私が当店に来たのは店のオープンから9カ月後で、今月で1年になります。


――2カ月前に全社で行われた従業員満足度調査「tenpoket」では、御社全体が業界平均と比較して高い水準にありましたが、中でも岩崎店長の店舗は点数が高く、「店舗への帰属意識」「リーダーへの信頼」「仕事の達成感」など、満点となる項目も複数あるほどでした。

特に「帰属意識」が高かったのが一番嬉しかったです。帰属意識が高いということは、次に入ってくる新人にも伝えられる「文化」が生まれているということだと思いますので。また、平均点が5点ということは、回答した8名全員が5点満点を付けてくれたということですからね。自分がやってきたことが間違っていなかったのだと思えました。

お話をお伺いした、「屋台屋博多劇場」新橋店の岩崎一典店長。


――店舗ではどんな取り組みをされているのですか?

正直なところ、「tenpoket」を行った3~4カ月前までは、むしろ最悪というのに近いチームワークでした。アルバイトリーダーの子が私のことをあまり良く思っていなかったので、私が言ったことも浸透しませんし、目標も立てられないような状況でした。スタッフもみんな楽しくなかったと思います。

当店のスタッフは半数が店のオープニング当初から入ってくれているメンバーなのですが、彼らがオープニング時の店長と関係性が強かったこともあって、後から入ってきた新店長の私を受け入れてくれず、反発していたのが原因でした。もっともこれは、最近スタッフが話してくれて、わかったことなのですが。

その状況が変わったきっかけは、私が変わったことに他なりません。半年前に「一家塾」という社内イベントがあり、その中で「普段伝えられていない感謝の気持ち」を伝える場があったのですが、その機会に思いきってスタッフのみんなに宛てた手紙を書きました。手紙の内容は、これまで自分のことしか考えられていなかったという反省、そしてこれからは「全店の店長の中で一番ありがとうを伝える店長になる」という決意です。それからは、「ありがとう」を営業中にも言いますし、それ以外でも意識して伝えるようにしています。

また、もともと私は自己開示※をあまりしないタイプの人間でしたが、それを機に、意識して自分のことを知ってもらうようにしました。そうすると、みんなも自分のことを話してくれるようになりました。そこから、どんどん溝が埋まっていって、スタッフとのコミュニケーションが一気にスムーズになったと思います。

※自己開示とは:自分の経験したこと・考え方・感情などを、「相手によく思われたい」「相手に嫌われたくない」という気持ちを抑えて、自分が感じたままに伝えることを言います。ありのままの自分を伝えるという点が特徴です。

従業員満足度調査「tenpoket」、外食業界平均との比較。全項目で業界平均を大きく上回っている。


スタッフの積極的な会員獲得により売上目標を大幅達成

――ES(従業員満足度)だけではなく、売り上げの面でも高い成果を上げられています。

今期の下半期が、上半期からは考えられないような予算だったんですよ。例えば12月の予算は750万円でしたが、そもそもそれまで700万円を超えたことすら一度もない、600万円を超えることもなかなか難しいという店舗でしたので、未知の領域でした。ですが結果としては795万円と、予算を大幅に超える実績を上げることができました。その後も連月、予算を100万円以上超えて達成することができています。

その一番の理由は、スタッフが一丸となって会員獲得に取り組んでくれているからです。当店では、入会金を200円払って会員になっていただくと、300円のお通しが一生無料、お誕生月には当店名物「鉄鍋餃子」を年齢の数だけサービスという会員制度がありまして、当店ではその会員獲得に力を入れていますので、その結果としてお客さまが増えてきているのだと思います。
会員獲得というのは言い換えれば未来の常連さまを作る活動で、今月会員が増えたら、その成果は2~3カ月後の数字に必ず表れてきます。また、その常連さまが新しいお客さまを連れて来てくださるという良い連鎖反応も生まれていて、それが売り上げにつながっています。

会員獲得の取り組みも、お客さまへの営業中の声かけだけではなく目標の進捗管理まで、アルバイトスタッフが中心となって積極的に取り組んでいる。


――会員獲得の目標管理はどのようにされていますか?

毎日みんなに数字を見せるようにしています。ミーティングはもちろん、営業が終わった後にLINEで日報を送ってもらっているので、そこに「今日の段階で何件取れているか」を記載してもらっています。目標数字と現在の数字がわかれば、アルバイトスタッフでも自分達でジャッジできます。今ではスタッフが自主的に「今何件だよ、あと何件で目標達成だよ」とか「Aちゃんは今日何件ね、Bちゃんは何件ね」と取りまとめや管理までやってくれるようになりました。

こういう動きができるのも、やはり土台にはお互いのことをさらけ出せる関係、言いたいことが言い合える関係を築けたことがあると思います。そういう土台ができていれば、「今月こういうことをお願いしたいと思っているんだけど…」と言ったときに、自分の意図、なぜ今これをお願いしているのかが伝わるので、必ず「わかりました」と返ってきます。あとは、「ありがとう」を伝えまくる。何回言われても嫌な言葉ではないと思うので。そういうことを意識して続けていたら、自然とこういう状況になりました。積み重ねですね。

その日シフトに入っているメンバーが、営業終了後にLINEで日報を送ることで、アルバイトスタッフを含む新橋店のスタッフ全員が、常に店舗の売上状況を把握している。


――「ミーティングの参加率」も満点ですね。アルバイトスタッフも含めた全員でミーティングをしたほうが良いことはわかっていても、日程が合わなかったり、時給が出せなかったりと、実現できずに苦労されている店長さまも多いと思います。

きっかけは何でもいいと思います。みんなで飲みにいこうとか、スポーツしようとか、とにかくみんなで集まる場を作るのが早いのではないでしょうか。一度集まって、「ミーティングって大事だね」と実感してもらうことが効果的だと思います。ただし「全体の7割が集まればOK」ではなくて、必ず全員でなければ駄目です。そこは妥協したくないですね。みんなに伝えたいことがあったとして、今日は10人中6人に伝えられたから、残り4人のうち2人は明日、もう2人は明後日…となると、伝える側の気持ちの温度感にブレが出てきてしまって、伝わり方も人によって変わってしまうので。やはり全員が集まることに意味があると思います。

当店のミーティングは、次のようなテーマを組み合わせて行っています。


MSRの活用方法

――ミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)の活用方法について教えていただけますか?

店長宛に送られてきたレポートをスタッフ全員分印刷して、共有しています。お客さまの声を受け止めるのに社員もアルバイトもないと思いますので、隠し事なく全てオープンにしています。
その後しっかりと読む時間を設けて、良かった点・悪かった点をそれぞれ出して、悪かった点の改善を今月の目標にしたりしています。特にコメント部分は真摯に受け止めようと言っています。難しいことを書かれているわけではないので、例えば「笑顔がなく暗い印象を受けました」と書かれていたら、「ファースト対応のときに意識するだけで違うよ」とか。MS&Consultingさんのレポートはコメントが充実していて、何をどう改善すれば良いかがわかりやすいので、すごくありがたいです。

「屋台屋博多劇場」新橋店。新橋駅近くという立地柄、サラリーマンのお客さまで連日賑わいを見せる。(写真は開店前の様子)


――活動目標を決めてもそれを徹底するのはなかなか難しいものですが、その点で何か工夫されていますか?

更衣室に目標を書いた紙を貼るのに加えて、メンバーの出勤時に口頭でも言うようにしています。例えば今月の目標が中間サービスの強化だったら、「今日も中間サービス頑張ろうね」とか、「今日もしっかりテーブルを歩かないと中間サービスできないよ」とか。自分も忘れやすいので、言うことによって自分自身も思い出すようにしています。とにかく毎日言い続けることが、一番良い方法だと思っています。

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