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ワタミ株式会社(居酒屋業態)

更なる2極化、景気変動に勝算あり

ワタミ株式会社(居酒屋業態)

ワタミ株式会社

東京都大田区羽田一丁目1番3号

会社ウェブサイト:http://www.watami.co.jp/

『季刊MS&コンサルティング 2011年冬号』掲載
取材・文:西山 博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
2010年、ファストフード型居酒屋という新ジャンルの市場投入で世の中に衝撃を与えたワタミフードサービス株式会社。話題の「仰天酒場 和っしょい2」は、ワタミグループのメニューのクオリティを維持しながら、現金チャージ型のデポジットカード会計と、セルフサービス型のオーダー・配膳システムによって低料金化を実現させた。長期にわたるデフレを経験した2011年以降の日本の外食マーケットと経営戦略についてお話を伺った。

これからの日本の外食マーケット

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代表取締役社長・COO 桑原 豊氏

年に2回社員を連れてアメリカに視察に行っていますが、日本よりも5~10年先を行くと言われているアメリカのマーケットでは、驚くべきスピードで二極分化が進んでいます。これからもその傾向はより鮮明になっていくでしょう。外食でいう二極分化の一極は、今日は親しい人とゆっくり美味しいものを食べたい、というニーズを満たすカジュアルダイニング。そしてもう一極は、今日は時間がないが、安くお腹いっぱい、そこそこ美味しいものを食べたい、というニーズを満たすファストフード。その中間のポジショニングの店はどんどん少なくなってきています。今後は、日本でも間違いなく同方向に傾いていくと思っています。当然ながら、居酒屋という特定の業種の中で見ても二極分化が起こっていくでしょう。

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ファーストフード型居酒屋をテーマに、立ち飲み屋でのキャッシュオンデリバリーと電車や地下鉄で使用する電子マネーから着想を得て開発した「仰天酒場 和っしょい2」の五反田東口店。既存業態とは業態設計が異なるため、業態転換ではなく新規出店での店舗拡大を目指す。

これまでは、親しい人と美味しいものを食べてゆっくりしたいなと思った時、4,000~5,000円で個室感のある業態が利用されていました。しかし、これだけ激しいデフレの中で一度お金を使わなくなってしまった方々にとって、もうこのマーケットはないと思うのです。しかし、半分の価格でそれを提供することができれば、大きな価値訴求ができます。そうなれば、カジュアルダイニングのニーズは残っていくでしょう。そして、それが居食屋「和民」や語らい処「坐・和民」が残るポジショニングだと思っています。私たちは、テーブルサービスをやる以上は、ホスピタリティにこだわった本来のテーブルサービスのスタイルを貫きたい。4,000~5,000円の雰囲気や料理を2,700円程度で提供できるのが「和民」や「坐・和民」の価値となっていくはずです。一方で、品単価が199、299、399円で戦う炭火焼だいにんぐ「わたみん家」は、今一世を風靡している均一居酒屋と戦っていくことになると思っています。

一方で、もう一極に当たるファストフードは、今の居酒屋というカテゴリの中には存在していません。それならば最初からそれを意識した業態をつくろうと、2009年の頭から構想を練っていたのが、「仰天酒場 和っしょい2」です。均一居酒屋への参入ではなく、ファストフード型居酒屋という新しいニーズの発掘を狙いました。

ファストフードとしてのニーズ

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「仰天酒場 和っしょい2 五反田東口店」:メニュー内容に対するコストパフォーマンスが業態のウリだ。滞在時間は約1時間を想定し、客単価は1,800円となっている。250円メニューと500円メニューがあり、250円メニューの食材原価は約35%。500円メニューは食材原価が50%に及ぶものも珍しくない。

例えば、出張先で一杯一人で飲みたいなと思っても、立ち食いそばや牛丼の店で酒を飲む人はあまりいません。時間はないが少し飲みたいというニーズはあるものの、無理にビールだけ飲んで帰るということはないのです。そんな時、居酒屋にあるようなメニューがファストフード並みのお手軽価格でそばにあったら、「ちょっとホテルに帰る前に一人で飲んでいこうかな」と思う。一方で、時間がない日は飲まなくても良いと家に帰っていた人が、「あそこに行くんだったら30分だけでも飲みに行こうか」と思える。そんな、新しいニーズを発掘できるのではないかと思いました。

低価格には誰もが関心を持っています。とはいえ、豊かな食生活に慣れた今の時代のお客様は、安ければ良いとは絶対に思っていません。安くて良いものしか口に入れたくないと思っていると思うのです。ある一定の価格だけに固執すると、メニューによっては質の高いものを出せない場合が出てきてしまいます。だから、倍のお値段を頂いても良いから、質に高いものを出したいと考えています。例えば、500円メニューの原価は大体50%です。一般的な感覚で考えるととても高いですが、それだけかけても250円メニュー一皿が売れるよりも高い粗利になる訳です。なおかつ、オーダー・配膳・会計をカットした簡略なオペレーションだからこそ、これだけの原価をかけられる。要するにファストフードなのです。そこまで割り切って初めて実現できるバランスといえます。

しかし、ただオペレーションを割り切っているだけではありません。ワタミグループの他の業態と同じように、サービスにこだわっています。「仰天酒場」には、(1)お客様が入口に入ったときの「いらっしゃいませ」、(2)キッチンに注文が入ったときの「ご注文ありがとうございます」、(3)取りに来て頂いた時の「どうもありがとうございます。温かいうちにお召し上がり下さい」、そして、(4)お帰りになる時の「どうもありがとうございました。お気を付けてお帰り下さい」という4つの接点があります。たった4つしかありませんから、その代わり、そこで接している時には本当に満面の笑顔で対応をしようと決めたのです。そして、これらは無くすことができない。ですから、私たちは決してこのオペレーションをサービスレスだとは思っていません。誰もファストフードのサービスが悪いとは思っていません。それと同じです。