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オリックス野球クラブ株式会社(エンターテイメント業態)

業界の枠を超えた魅力度向上を目指し、ゲームの様な楽しさを現場に

オリックス野球クラブ株式会社(エンターテイメント業態)

オリックス野球クラブ株式会社

大阪府大阪市西区千代崎3-北2-30

会社ウェブサイト:http://www.buffaloes.co.jp/

『季刊MS&コンサルティング 2010年夏号』掲載
取材・文:西山 博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
公益財団法人日本生産性本部サービス産業生産性協議会がこの春、経済産業省の委託を受けて行った業態横断的な顧客満足度比較が可能な日本版CSI(顧客満足度Index)の結果を公表したが、多くの小売・サービス業にとって、同業界内の市場競争を考えるだけでは成り立たなくなってきている。プロ野球チームにおいても、顧客が限られた余暇の時間をどのように過ごすかという観点から、他の業界も視野に入れた、つまり顧客視点を意識した魅力度向上への取り組みが始まっている。その概要を、オリックス・バファローズ(正式名称:オリックス野球クラブ株式会社、以下、オリックス)経営企画室の葦原一正氏、中村浩子氏にお伺いした。

球場の顧客満足度要素

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経営企画室の葦原一正氏、中村浩子氏

球場の顧客満足度を決定する要素には、主に次の4つがあるという。

  1. ゲーム成績
  2. ゲームのイベントとしての面白さ
  3. 飲食やグッズのラインナップと接客
  4. 施設の快適性

オリックスでは現在、これらの満足度要素を全て定量化する運動を実施している。

「1」はファンの満足度に直接的に影響を及ぼす項目だ。(「2」については、ゲーム中、ファンに携帯電話を使ったアンケートを実施して数値化。「3」と「4」については、4~5月のリーグ開幕時期・8~9月の閉幕時期の年2回、それぞれ約70ヶ所の現場を対象に行うミステリーショッピングリサーチによって定量化を図っている。データが蓄積してくれば、それらの要素が売上やファン形成にどれほど影響しているかを分析し、戦略的な検討に利用していく予定だ。

オリックスの課題

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そのような取り組みの発端となったのは、ファンの数が少ないという課題認識だ。オリックスの場合、観客動員数や収支の面では比較的他球団と遜色ない結果を出している一方、独自の調査によりファン数が少ない方であると捉えている。 中村氏は、「ファンクラブの方々の年間平均来場回数は6回を超えており、まさにコアなファンの皆様に支えて頂いています」と話す。

とはいえ、もっと多くの人に野球観戦の楽しさを知ってもらい、球場の存在価値を高めていくためには、ライトなファンを増やしていく必要もある。そのためには様々な施策が考えられるが、ファンの度合いがライトであるほど、先の(1)に挙げたゲーム成績以外の要素が重要になってくると葦原氏は考えている。「ミステリーショッピングリサーチで訪れるモニターの多くはコアなファンではないため、逆にそうした方からの意見をより注視していきたい」という考えの基、マーケット拡大に思考を巡らせている。

メジャーリーグに学ぶ

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葦原氏が近年強くベンチマークの意識を持っている対象が、米メジャーリーグ(以下、MLB)だ。1995年頃には、日本もアメリカも球場の市場規模は約1,000億円強で大きな差はなかったが、MLBだけがこの十数年間で市場規模を当時の6~7倍近くまで拡大させた。 その理由は、「市場調査やマーケティング活動を行ったり、スポンサーを見つけたり、『MLB.com』などのWEBサイトをオープンするなど、様々なアイデアの実現や運営効率の向上を、MLBに所属する各球団が独立してではなく共同し、MLB全体で活動を行っていったこと」だと葦原氏は分析する。2007年5月、パシフィックリーグマーケティング(PLM)という団体をパリーグの所属球団が共同設立し、MLBをベンチマークしながら活動を始めている。

具体的な所で、WEBの共同運営やクライマックスシリーズの共通広告、マーケットリサーチの一部などが既にスタートしている。 今後は、先の「1」~「4」の要素の強化を目的に、ミステリーショッピングリサーチのような顧客満足度やニーズ調査も視野に入れながら、各球団が協力して業界全体を盛り上げるための施策を進めていくことが効果的だと葦原氏は考える。

競争相手はディズニーランド

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「昔の球場の運営スタイルは、極論を言えば接客というよりはモノの受け渡しをしているだけでしたが、これからは、サービス業・エンターテイメント業として、顧客満足を追求しているディズニーランドやUSJ(Universal Studio Japan)、映画や観劇、さらにはデパートなどの商業施設などとも同じ土俵で勝負していく必要があると考えています」と葦原氏は話す。

そのためにはサービス品質の向上が必要となるが、議論を重ねた結果、マニュアルや行動規範の作成などよりも、まずはお客様からどう見られているかを定量化することが、最も分かりやすく、かつ効果が上がりやすいと判断し、ミステリーショッピングリサーチの実施を決めた。

ロールプレイングゲームの楽しさを現場に

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実は、現場スタッフも同じ危機感を持っていたという。ミステリーショッピングリサーチの導入を提案した時、現場の反応は満場一致で賛成であった。「このような調査を行う時は位置付けが大切ですが、ボードメンバーが現場を締め付けるためではなく、現場が目標を持ってそれを実現するために行うという共通認識を、ボードメンバーの間でしっかりと固めました」(葦原氏)

ミステリーショッピングリサーチの活用はあえて現場に任せている。 背景には、「あらゆる項目を定量化して情報共有することで、まるでロールプレイングゲームで登場人物のレベルを上げていくような楽しさを現場に取り入れたい」という葦原氏の想いがある。結果、70ヶ所以上ある売店やチケット売場などで、緊張感を高めるために各部署共通の名札を作るなどの取り組みが自主的に行われるようになってきているという。

葦原氏は、将来の抱負をこう語る。「余暇の時間は限られたものです。朝起きてからどこに行こうかと考えたときに、球団も楽しみの一つとして思い出して頂きたい。それを、球団の枠を超え、現場もボードメンバーも一丸となって目指していきたいと思っています」

将来、日本のエンターテイメントの在り方が様変わりする日も近いかもしれない。

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